「童話・ニンニク物語」

この物語はJA職員が創作したものです。
それに村内の 小中学校のみなさんに絵を描いていただきました。
 山々を冷たい風が吹き始めたころ、にんにく夫婦がどこへゆくあてもなく旅をしていました。 皆にくさいと嫌われ、毎日歩き続け、ある日のことようやく小高い丘にたどりつきました。
「母さんや、ここなら森も水もあるし、静かでながめもいい。ここに住もうか」
「ええ、でもまたみんなに嫌われて追い出されないかしら?」
「いや、ここならだいぶ離れているから大丈夫だよ。」
この丘がすっかり気に入ったにんにく夫婦は、さっそく家を建てる材料を集め始めました。
 すると、リスがあわててやって来て、枝の上から言いました。
「臭い。臭いぞ。何だかさっきから変な臭いがすると思ったらおまえたちか。どこか遠くへ行ってくれ!」
にんにく夫婦はしかたなく、また別の場所を探すことにしました。
しばらくして、
「ここならいいだろう。」
と、まわりを見回していると今度は樹のかげから様子を伺っていたキツネの親子に、
「臭い、臭いぞ。こっちに来るな!」
と、石を投げつけられました。おどろいたにんにく夫婦は必死に逃げましたが、途中馬にけとばされ、牛に突き飛ばされて体中傷だら けになってしまいました。
 もうヘトヘトに疲れきったにんにく夫婦は、やっとのこと山奥の洞窟を見つけました。
「父さん、私もう一歩も歩けない。」
「ここは暗いけど誰のじゃまにもならないから、しばらくここにいよう」にんにく夫婦はぐったりと眠ってしまいました。
 さて、ちょうどそのころ洞窟の奥の方で誰かヒソヒソ話し合う声が聞こえました。
「何とかあの臭い夫婦を追い出すいい方法はないだろうか。」
たくさんの虫たちが相談をしていました。近寄れば臭くて頭が痛くなり気が遠くなるし、さわれば死ぬかもしれない。いくら遠くから 「出ていけ」とどなっても、ちっとも起きそうもない。虫たちはほとほと困り、結局自分たちが引越しをすることになりました。
 何日くらい眠ったのか、にんにく夫婦はようやく目を覚ましました。
すっかり疲れもとれ小川へ顔を洗いに行きました。
すると、小川にこの前の子ギツネがいました。魚をとろうとしていますが、なかなかつかまえることができず、泣きべそをかいています。
 「お父さん、お母さんは?」
と、にんにく夫婦がたずねると、子ギツネは泣きながらこたえました。
「父さんも母さんも重い病気になって、何日もご飯食べていないんだ」
  そこでにんにく夫婦は急いでキツネの家へ行きました。 すると父さんギツネはせきこんで苦しそうにし、母さんギツネは熱が あり、ぐったりしているではありませんか。その様子を見た父さんにんにくは、外に行って薬草をとり、煮詰め、それに自分の体から絞った汁を混ぜ、キツネに飲ませました。
 翌朝、病気の治ったキツネの親子が洞窟を訪ね、にんにく夫婦に言いま した。
「この前は、いじわるしてごめんなさい。もし良かったら自分たちの となりに住んでください。そしてみんなも助けてください。」
「えっー、みんなも?」
にんにく夫婦はびっくりしました。
「ええ。馬さんも牛さんもリスさんも、みんな病気で寝ています。」
さっそくにんにく夫婦は一軒ずつ家をまわり、自分たちの絞り汁を飲ま せました。  ようやく全部の家をまわり終え、洞窟に帰るころには、自分たちの汁 をあまりにもたくさん絞ったために、にんにく夫婦はやせこけていまし た。 「母さんよかったね。」
「ええ。みんな喜んでくれて私うれしかったわ。」
にんにく夫婦はそのまま目を閉じました。
 二〜三日して元気になったキツネや馬、牛たちがみんなでにんにくさん へお礼をしようと、洞窟へやってきました。 ところが、洞窟の入り口で「にんにくさん」と呼んでも返事がありま せん。中に入ってみると、にんにく夫婦は死んでいました。みんなは悲 しみながら、にんにく夫婦のお墓を「みんな」を見渡せる小高い丘の上 につくってあげました。
 やがて春になり、草花が芽を吹き、丘にもタンポポやスイセンが咲き、 一面花畑となりました。子どもたちはその中を気持ちよさそうに走り 回り、遊んでいます。
 すると子ギツネが、にんにく夫婦の墓の上に今まで見たこともない 芽が生えていることに気づき、みんなに知らせました。おおいそぎで 集まった仲間たちは、輪になって不思議そうにのぞきこみました。 じっとその芽を見ていた父さんギツネは言いました。
「これはにんにくさんの子どもじゃないか。」
「うん、そういえばにんにくさんのにおいがする。」
「じゃあ、みんなでこの、にんにくさんの子どもを大事に育てよう」
なつかしいにんにくのにおいが、そよ風にのってどこまでもひろがって いきました。
それからは、病気をする動物もいなくなり、みんなで元気に暮らしまし た。

----- おわり -----

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