『O−157退治にニンニク』

■弘前大学の佐々木博士らが講演

 旧JA天間林主催による「ニンニクが病原性大腸菌O−157を撃退する」と題した講演会で、講師の佐々木甚一医学博士(弘前大学医学部細菌学講座講師)は「ニンニクがO−157を殺菌する」という、興味深い研究結果を発表いたしました。講演は全国に先駆けて行われ、佐々木博士らの研究グループが進めてきたニンニクの抗菌作用についての実験結果が報告され、その時の講演内容をご紹介いたします。 興味深い研究結果を発表した佐々木博士(写真=左)と北博士。

 


「O−157は悪質な大腸菌」

 昨年から猛威をふるっている病原性大腸菌O−157。桿(かん)菌という棒状の鞭(べん)毛を持つ細菌で、ベロ毒素を出し、重傷では死に至るという悪質な大腸菌です。実際、感染者が死亡する例や県内でも感染者が出ております。食中毒は普通、サルモネラ菌やブドウ球菌などの食中毒菌が約十万個から百万個くらい一気に体内に入らなければ発症しません。ところが、このO−157は百個以下の菌が体内に入っただけで発症すると言われております。特徴は出血性の大腸炎であるため、血便が出ます。

「ガンの研究から始まった実験」

 佐々木博士らは、自然界の食物から抗ガン物質を探す研究をしており、平成2年にはイカ墨の中に抗ガン物質の成分があるという研究報告をまとめました。この研究で次に選んだテーマが、古くから体に良いと言われているニンニク。研究に入った時、ちょうどO−157が猛威をふるっている時期で、セラミックスメーカーからセラミックスのO−157に対する殺菌効力の研究依頼されました。このためニンニクとガンの研究は一時中止。研究が終了し、ガンの研究を再開しようとしたが、ニンニクもO−157に対して殺菌効力があるのでは、ということから始めたのがこの実験でした。 「ニンニクの殺菌効力を立証」

 この実験は、佐々木博士をはじめ同大学法医学講座講師の北武医学博士や青森県産業技術開発センターが共同で行っております。実験に使用したO−157の菌は、栄養分を入れたシャーレにO−157の菌を塗り、37度で一晩培養しました。細菌は分裂する速度が速く、普通の菌であれば1個が2個になるのに、条件が良ければ20分か30分で分裂する性質があります。このO−157の場合、一晩置いただけで一個の菌が約数千万個から数億個に増殖し目に見えるコロニー(集団)になります。一方、ニンニクはスライスしたものを60度で3時間乾燥させた後、粉砕して粉末状にしたものを使用いたしました。
 実験はまず、試験管に滅菌蒸留水とニンニク1%を入れた滅菌蒸留水を用意し、それにO−157の菌を数えて入れ、37度で24時間培養する方法をとりました。そして24時間後に、2つを比較し、ニンニクの殺菌効果を調べました。その結果、滅菌蒸留水の方は1ccあたり約3億くらいの菌があるのに、ニンニク水の方は全て菌が死んでおりました。佐々木博士らは最初、この結果について、何か手違いがあったのではと同じ実験を繰り返しましたが、結果はいずれも同じでした。また、ニンニクの濃度を低くした実験も行いましたが、殺菌効力は弱くなったものの、それでもO−157の数は確実に減っておりました。そこで北博士の案で、ワサビや人気のアロエでも同じ実験をしてみましたが、ワサビは若干の殺菌効力はあったもののアロエは逆に菌が増えており、ニンニクが一番O−157の菌を殺菌するということが分かりました。さらに実験は耐熱性の実験へと進みました。これは、熱を加えた場合、ニンニクの成分が壊れ、殺菌効力がなくなるのではということから行われましたが、100度で10分加熱しても完全にニンニク水はO−157を殺菌していたのです。20分でも同様の結果が得られ、耐熱性のあることが確認されました。



蒸留水(左)とニンニク1%を溶かしたニンニク水でのO−157の培養実験。24時間後、蒸留水では菌が増えコロニーが出現しているが、ニンニク水ではすべての菌が殺菌されていた。


「科学的な立証付け」

 ここまでの実験で、ニンニクはO−157を殺菌することが立証されましたが、今度はニンニクのどの成分に殺菌効力があるのかという実験を北博士が精力的に行いました。この実験は、ニンニクの成分を分けることから始まりました。結果的には大きく五つの成分が取れ、それにO−157を入れて実験。結果は3つの成分に殺菌効果が出ましたが、科学的に結論付けるため開発センターで分析が進められております。ここで、この成分をさらに細かく分けて行くと殺菌効力が弱くなることも分かっており、佐々木博士らはニンニクの成分を細かく分けないニンニクそのものに菌を殺す力が強いという印象を持っているということでした。佐々木博士らは、ニンニクの成分のアリインに酵素のアリナーゼが反応するとアリシンという成分になり、このアリシンに殺菌効力があるのではとみておりますが、このための立証付けを進めております。

 次に行った実験は、野菜などについたO−157にも殺菌効力があるのかという実験。これでは白菜やカブ、キュウリにO−157をつけ、それを1%のニンニク水に浸した場合はどうか、という実験ですが、全てのO−157を殺菌しているという結果を得ています。この結果から、O−157の菌がついて危ないと思われる食材は、ニンニク水に浸せば効果的だということが言えます。さらに、他の食中毒を起こす菌などへの殺菌効力も調べております。シャーレの寒天培地の半分に1%のニンニク水を入れ、そこにO−157やコレラ菌、サルモネラ菌、MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)などを線状に塗り、その殺菌効力を調べてみました。
 結果は、O−157は抵抗力の強い菌だったが、ここでも全ての菌に殺菌効力があるという結果がでました。特に、MRSAは院内感染の主な原因菌で抗生物質も効かないO−157と並ぶ全世界で問題となっている厄介な細菌ですが、これにもニンニクが殺菌効力を持っていることが立証されました。佐々木博士らはこれらについても、さらに研究を進めていくことにしているということです。

「ニンニクの殺菌効力は最強」

 これらの実験では、自然界には存在しないような非常に多くの数の菌を使って実験しているわけで、それでも1%ほどのニンニクの成分で全て殺菌する成績を出しております。
 これらのことより、ニンニクを上手に利用すればほとんどの病原性細菌を殺せるということになります。特に生野菜などはドレッシング感覚でニンニクを使えば、その殺菌効力は十分に出せると佐々木博士らは話しております。しかしニンニクは刺激性が強いことから、大量にとると胃潰瘍(かいよう)とか貧血になることも心配されますので、食べ過ぎには注意が必要です。


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